ラフ・シモンズはNYファッションウィークを変えることができるか?

2016年8月、Diorを去ったRaf SimonsがNYのアイコニックなブランド、Calvin Kleinにチーフクリエイティブオフィサーとして正式に移籍したというニュースを読んでから、その日を待ち望んでいた。

 

Raf Simonsによるファーストコレクションが遂に2017年2月10日、デビューを果たした。

 

今年1月末には、Calvin Klein by Appointmentのローンチ、そしてファッションショー直前には新広告ビジュアルが発表され、ミニマルで洗練されたフォトがNYいや世界中をジャックした。アメリカのブランドのはずなのに、ヨーロッパの香りのする、オーダーメイドで注文できる新ラインをスタートさせた。WWDによると、生産はNYで、個別のアポイントメントは4月から受け付けるという。

Calvin Kleinの新広告。アメリカン・クラシックを表現している

Calvin Kleinの新広告。アメリカン・クラシックを表現している

アンダーウェアの広告もお披露目になり、今までにない新鮮なイメージを打ち出した。

Calvin Kleinといえば、これでもかというくらい筋肉ムキムキのセクシーな男性が下着1枚というスタイルが続いていたが、Rafのディレクション下では、Andy Warholのアートの前に、細くアンニュイな男の子がポツンと写っていて、セックスとは全くかけ離れたイメージとなっている。

以前話題になったJustin Bieberの広告

以前話題になったJustin Bieberの広告

今回の新広告

今回の新広告

たまたまタイムズスクエアに行ったら、Calvin Kleinがジャックしていたので、パチリ。

 

Calvin Kleinはデジタル、トラディショナル広告、イベントを本当にうまく駆使している印象で見ているだけで勉強になる。特にデジタルアクティビティはミレニアルが自ら発信したくなるような仕掛けをつくるのが非常にうまい。

Calvin Kleinは下着屋さんじゃないの?と思う人にはいい機会だし、ここでブランドについてざっくりと振り返ってみよう。

 

ニューヨーク市生まれのCalvin Kleinが、マンハッタンにあるFITでファッションを学んで卒業した後、1968年に始めたブランド。NYの洗練と冷静な情熱を体現したようなデザインは、発表直後にあっという間に世界を席巻。翌年にはVogueに登場しているし、スタートから5年以内でスポーツウェアと香水のラインをローンチ。香水ラインの伝説は説明不要だろう。70年代後半までにはアンダーウェアのラインを発表している。Herb Rittsの撮ったMark Wahlbergの広告はあまりに有名だよね。2003年にKlein本人がデザイナーを引退した後でも、アメリカとNYを代表するブランドであり続けている。

 

NYといえばCalvin Kleinなわけだが、ここでRaf Simonsを知らなかった人たちに、彼について少し紹介しよう。

 

Rafは、Calvin Kleinが誕生した1968年にベルギーで生まれたデザイナー。だが、ファッションを学んだことは一度もない。服のデザインは独学。彼がアントワープで学んだのはインダストリアルデザインだ。95年にメンズウェアのデザイナーとしてデビューし、Jil SanderやDiorで活躍した。彼はアートに造詣が深いことで有名で、それは彼のするデザインに反映されているからよく分かる。

 

Calvinといえばミニマル。Rafといえばミニマル。

ブランドアイデンティティとRafのビジョンがぴったりだから納得。

 

ショーはどんなかというと、セックスアピールを武器にしていた、これまでのブランドイメージと変わって、ジェンダーレスでユニセックスな着こなし、エフォートレスなアティテュード、そしてひたすら引き算されたデザイン。

若さやポジティブさを表現しながら、ミニマルでクラシックな上品さもあって、ブランドのコアを余すところなくアピールしている。服がブランドを語るという真髄を思い出させてくれた。

 

NYFWといえば、ヨーロッパと比べてコマーシャルすぎて学園祭の延長線みたいなショーやプレゼンテーションばかりに、Rafは全く違う空気を落とし込んだ。

メディアの至るところで、RafはNYに影響を与えるか?という記事が目立つが、間違いなく答えはYES。彼は、多大な影響をNYファッションシーンに与えた。

小さく、限られたショーのスペース。ファッションを本当に理解した、選ばれた人たちのみがショーを見ることができた。

モデルをみると、トレンディでいわゆるSNSセレブリティモデルが一切いなく、正統派で硬派なキャスティングをしたのが分かる。

まるで、Rafはどの人種のモデルに対しても平等にチャンスを与えたかのようだ。

このご時世にトレンディモデル、ブロガー、セレブリティに頼らずにここまでバズを起こしたCalvin Kleinには「私たちは自分たちのクリエーションのみで勝負をするんだ」という自信が感じられた。

 

ショーを閉じたRafと、彼の右腕で、いなくてはいけない存在のPieter Mulierが登場したときは感動してしまった。「Dior and I」を見た人は彼のことを知っているだろう。どんな気持ちであのショーをクリエイトしたのか、感慨深くて、その瞬間を目撃することができてよかった。

あまりにもCalvin Kleinは長年セクシーでうっていたため、既存顧客がどう反応するかに注目だが、それよりもいままでCalvin Kleinに目を向けていなかった新しい顧客を圧倒的に、あっという間に獲得できると思うので、心配する必要はなさそう。

正統派かつ硬派なクリエイティブオフィサーの  Rafが創る新生Calvin Kleinから、目が離せない。

Pieter MulierとRaf Simons

Pieter MulierとRaf Simons

 

ライター:稲木ジョージ

エディター:八木橋恵

コーディネーター:恩地祥博

公式ウェブサイト:www.georgerootltd.com

social media:@georgeinaki